2015/10/24 アルピニズムと死 -僕が登り続けてこられた理由-

本書のテーマはクライマーの死である。8000m級の山を登る行為は、酸素濃度、雪氷の不確定さ、気象条件どれをとっても我々一般人の想像を絶する厳しさがあり、ましてや岩壁のクライミングとなると、1度のミスが「致命」となることは想像に難くなく、実際に多くのクライマーが山で命を落としてきた事実もある。そんな中、酸素ボンベも持たず、最小限の装備と食料に単独で、しかもわざわざ過酷な季節に難しいルートでチャレンジする山野井氏は「あいつが一番死ぬ確率が高い」「天国にいちばん近いクライマー」と呼ばれていた。

そんな彼はなぜ命を落とさずに今に至るのか。
雪崩などコントロール出来ない自然現象の犠牲になるケースも多く「運」もあるとは思うが、過酷な状態に晒されていても冷静に客観的・合理的判断をし、リスクを減らす努力に手を抜かない慎重さとそれを支える精神力がベースなのだと本書から感じることが出来る。


『想像すること...。僕の最も得意とする分野かもしれませn。
~中略~
出発前に情報収集することも必要かもしれませんが、それ以上にいろいろな状況を事前に想像しておくことも、とても大切に思えるのです。もしも「最悪」といわれる状況になったとしても、それに対する心構えを頭の中に描けていれば、冷静に対応も出来るでしょう。
~中略~
過酷な状況を想像することも必要だと思っています。渓谷の中で突然に豪雨が降りだしたら、ロープで繋がるパートナーが大滑落したら、憧れの山を目の前に雪が降り出したら、何時でも雑誌やテレビの中の山登りのように、上手くはいかないのです』

妻の妙子さんについて
『唯一の弱点は、危険な場所でも怖いと感じない点でしょう。これは大きな問題でもあります。行動に慎重さが足りないような場面を何度も見ています。慎重すぎる僕と一緒でなければ死んでいた可能性は高いでしょう。
~中略~
しかし、彼女からは冷静さについて学びました。どんな状況になろうとも決してイライラしない。怒らないのです。
例えばロープが絡まり、なかなか解けない。雨が続き、いくら待っても山に向かえない。パートナーがミスばかり繰り返す。パートナーが登るのが遅い...。
登山とは大自然の中で大きな気持ちで行うべき遊びなのに、思わずイライラしてしまうことはいくらでもあります。どんな場面でも正しく対処していくうえでも、冷静さは、重要な技術の一つだと思います。僕は、そこは妻を見習うようにしています。』

無事故の理由-登山家ヴォイテク・クルティカについて
『彼のクライマーとして驚く点は、登攀記録だけではなく、今まで一度も怪我をしたことがないということです。何十年も登っていて捻挫ひとつしたことがないそうです。
~中略~
ただ彼は、とても慎重に進むべきルートを選択していました。それはK2当面を挑戦していたときに理解しました。ルートの選び方が僕とまったく同じだったことで、パートナーとしての信頼感がより増したのです。雪尾根の雪庇の横を歩かなければならないとき、他のクライマーなら選ぶだろうラインよりも、さらに数メートルは雪庇から離れて歩いてくれます。氷河上のクレバスでも臆病なくらい大きく迂回します。それがときには時間が余計にかかると予想されても、安全だと思われるラインを優先させます。』

『僕は困難を好み、何度もそれを克服してきました。しかし吹雪の一ノ倉沢へ出かけるような、危険な領域には踏み込まないように注意してきたのです。
破天荒の格好良さを少しは理解できますが、胸の奥に見え隠れする狂的な熱を抑えながら、計算高く慎重に山を選び、状況を見極めてきたのです。』


yamanoi.jpg金沢で開催されたモンベル創立40周年記念イベントで購入。特別ゲストの山野井泰史さんからサインと記念撮影をして頂いた思い出深い一冊である。因みに山野井さんと私は同じ誕生日です(年齢は違いますが)

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